50回目のファースト・キス

同じ事を、何度も何度も繰り返さなければならない、更にその終わりが見えない、そう言う状況に陥った時、あなたはどうしますか？と問われているような作品です。

反射的に「恋はデジャブ」を思い出しました。主人公がタイムリープに陥ってしまい、同じ日を繰り返すと言う内容ですが、この場合、自分以外が全て昨日と同じ状況、同じ言葉を喋ると言う、否が応でも受け入れなくてはならない究極の反復環境です。
対して、今作は恋する女性の記憶が１日しか持たない。しかし恋する人にとってはその女性が全て、と言う心理的状況が、この２作品を似通ったものとして関連付けたのだと思います。

逃げられないがちがちのオール反復環境「恋はデジャブ」に比べて、今作は、反復しなければならない対象は、愛する女性ただ一人。諦めてしまえば、終わる事のできる状況なのですが、そこは恋する者の心理、心が捕らわれた者のどうしようもない状況なのだと思います。

自分が知っていて、相手が知らない、を繰り返すと、人はおざなりだったり横柄な態度になったりしがちですが、そうも出来ないこの２作品の状況。そこに生じる悩みや葛藤、相手に対してどう接して行くのか、自分が果たして出来るだろうかと省みる人間の成長が伺えるというところに、あまり現実的ではない状況を題材にしているにも拘らず、誰にでも解りやすく感情移入しやすい作品になっていると思います。更に明るく描かれているところが、両作品とも時代や年代を超えて高評価を受けている理由ではないでしょうか。