HiraHira blog

保護犬と暮らしと、ときどき映画

人生の特等席

人生の特等席 [DVD]

素晴らしい活躍をした人の人生にも、必ずかげりは訪れる。どんな社会的地位があっても、皆やがて老いて、普通にやっていたことが時代遅れと馬鹿にされたり、体力や記憶を患い相手にされなくなったり、時には忘れ去られたりする。
しかし、人生とはそう言うもの、イーストウッドが観せる作品はいつもそうなのだ。
今回も老いぼれた姿を見事に披露してくれた。
人生のスポットライトが当たる部分を作品にするのは、カッコよくて皆んな憧れる。だがその対極の影の部分を、控え目ではなく、かと言って大袈裟にせず、諦めを含みながらも決して惨めではない、別角度の幸せや希望を描くのは、豊富な人生経験と信念、そして技術が必要だ。
老いた俺を見ろ、と言わんばかりの深いしわの顔のアップや、とても身長が2メートル近くある人物とは思えない、ぺしゃんこで座っている姿は、もう充分と言うくらいど真ん中に訴えてくる。
加えて、今作は朴訥な父と娘の距離感が知られざる事実と絡めて描かれている。
「君の求めているものを、彼は与えられない。だからもう求めるな。」若いスカウトマンがイーストウッドの娘に贈った言葉。相手に求めているうちは、人生は変わらない。良くも悪くも自分が変わるしかないのである。
ミリオンダラーベイビーやグラントリノと違い、幾分ハッピーエンドにしてくれて、私は助かった。