HiraHira blog

保護犬と暮らしと、ときどき映画

ミスター・ノーバディ

ミスター・ノーバディ(字幕版)

この作品は、非常にたくさんの人生パターンが時系列を前後させて出てくるので、つい其々のストーリーに没頭しそうになりますが、まずは、118歳のニモノーバディと言う老人が、死ぬ際に自分の人生の記憶を振り返り語っている、と言う大前提を押さえておきましょう。
注意したいのが「人生を振り返って」ではなく「人生の記憶を振り返って」と言うところ。つまり記憶という確実ではないものを、人類最年長老人が語っていると言うことで、混乱と錯綜と忘却がデフォルトです。

全部で12人生のパターンが出てくるらしいのですが、その中には、ある人生パターンの想像の中の人生パターンも混じっていてややこしいです。
これがパラレルワールドの話ではない事は、前述の前提と結末前の本人の言葉によって明らかですから、私は、老人の記憶と妄想の断片でコラージュされたバタフライエフェクトの様々なパターンと言う理解をしています。人生の哲学と言うよりは、恋愛の比重が非常に高い作品です。

人生は選択の連続、と言うテーマの中に独自のポイントとして「選択できなかった9歳の」あの一点が全ての始まりと言うところ。子どもにとって親の身勝手が、如何に後の人生に影響するかを再認識させられます。
全体としては、それほど難解ではない哲学的意図を、目一杯時間をかけて複雑に説明されたような疲労感がありましたね。